新時代の基幹業務システムを導入するアジャイル方法論
一般的に、ERPなどの基幹業務システムを導入する時は、依頼企業はRFPを作成し、SIerなどが提案書を作成し、コンペをします。
企業内のユーザーの要望を情報システム部門がプロジェクトとして案件化しRFPを作成します。
一般的に、受託開発型の契約となります。
ここにお互い大きな不幸が待っています。
不幸1
SIerはクライアントのRFPを元に見積もりをしますが、大きなシステムで、環境の変化もあり、複雑で、文字だけで曖昧ですから、ハイリスクです。これは、見積にリスク・プレミアムとしてオンされます。極めて自然です。
不幸2
情報システム部門は、Slerが過大に見積もりしていないか詳細に評価します。情報格差があるので、SIerに詳細な見積の根拠を求めます。SIerが漏 れ無く提案、見積もり出来るようにRFPを作成しますが、ユーザーとトップマネジメントにサービスする立場の情報システム部門は、リスク回避のためRFP の作成に膨大な時間をかけます。これも自然な行動です。
不幸3
SIerは、RFPを元に要件定義をします。これが、受託開発の検収条件になりますので重要です。一方、この要件を満たしさえすれば責任は果たした ことになります。この要件を満たすことが目標となりウォーターフォール型の開発が行われます。誰が、何に、どう使うかわからないまま下請け会社などが開発 をはじめます。
この時点で、そもそものユーザーニーズを満たせるかというゴールではなく、要件定義通りに開発できるかがゴールになり、ゴールの不一致が起きます。
不幸4
検収によって支払いが行われますので、情報システム部門は納得するまで改修要求をします。SIerは、納得してもらうまで改修作業を続けます。その後、引き渡し後もSIerは瑕疵担保責任を負います。
ソフトウェアという依頼者にとって形がなく、複雑で理解できないものなので、なかなか納得出来ないのは当然です。納得出来ない顧客を相手にするSIerには、大きなリスクを負える経営基盤、能力、忍耐力が必要になります。
当然これは請求書にオンされます。
不幸5
巨額のコスト負担、ウォーターフォール型で開発した曖昧で巨大なシステムが、要件を満たしているがユーザーニーズを満たしていなかった時、不幸が現実のものとなります。
残ったものは、ユーザーの不満と開発現場の疲弊。
新時代の基幹業務システムを導入するアジャイル方法論
これからの時代は、クラウドで動くシステムを導入前にチェックして、実際に使えるかどうかを自社のユーザーが直接判断して導入する方法に変わっていくべきです。
そこで見つけたクリティカルな課題をベンダーに伝え、ベンダーがどのユーザーにも役立つ機能であれば、採用します。これは受託開発ではありません。検収もありません。新しい形です。
ユーザーが必要な機能は常に変わるという前提で、詳細な要件定義をせず、アジャイル開発します。
非常にスピーディに開発されますが、自社専用ではありませんので、再度評価します。現状より良くなり、コストも安いということになれば導入決定します。
RFP、提案、ウォーターフォール型開発によるミスマッチ、受託責任などのオーバーヘッドが減りますので、大幅なコストダウンができます。
事前に形あるものを見て、納得して導入できますので、リスクも低いです。
新しい時代の方法論となるでしょう。
ツバイソ株式会社
代表取締役 CEO 印具 毅雄(イング タケオ)
公認会計士、税理士
広島生まれ、福岡育ち。中学生の頃からパソコン、プログラミングが好きで、N88-BASICやマシン語に親しむ。大学、大学院では、AI関連技術のニューラルネットワーク、ファジィシステムとともに遺伝的アルゴリズムの改善研究をC言語で行う。
1999年、修士(芸術工学)。日本知能情報ファジィ学会論文賞受賞「単峰性関数当てはめによるGA(遺伝的アルゴリズム)収束高速化」
インターネットベンチャーを立ち上げるべく、経営の勉強のために公認会計士を取得(公認会計士二次試験2000年合格、登録番号19193)。監査法人トーマツ(Deloitte)を経て、2006年にブルドッグウォータ株式会社の創業、事業開始。
2015年、同社よりRobotERPツバイソ事業を会社分割し、ツバイソ株式会社を設立。