生産性向上のため、人事制度はパーソナライズ化へ向かう?
- 10月より、ファーストリテイリングが、希望者に週休三日制(条件有り)を導入することとしました。
- 同じく10月より、リクルートホールディングスが、全社員、日数制限なく在宅勤務ができる制度を導入することとしました。
- 7月より、国家公務員は、夏の勤務時間を1~2時間前倒しする「ゆう活」が導入されました。
- 伊藤忠商事やデンソーは夜間の残業を原則禁止して早朝勤務を促す制度を導入しています。
多様な働き方の目的は何か?
組織が多様な働き方をできるようにしているのは、全社員を皆同じ人間として、ひと塊として扱うよりも、個別にパフォーマンスを最大化できるような環境を提供する方が、総体としての生産性が上がるからです。
それは、同じものを大量生産していればよかった時代から、仕事の付加価値の多くが、個別性高い知的生産活動に変化したからです。
新しい製品、サービスを考えたり、提案書を作成したり、人と会って新しいパートナーシップが生まれたり、刺激を受けてアイデアが生まれたりといった知的生産活動は、9時から6時まで決まった時間、決まった場所に居ればできるものではありません。休みの日曜日にドライブをしているとき、スポーツをしているとき、ベッドに入って寝る前にふと良いアイデアが生まれたりするものです。つまり柔軟な働き方ができる必要があります。
私は、成果を出しさえすれば、何時間働こうが、どこにいようが自由にしてもらって構わないと思います。
逆に、成果を出せないなら、朝9時から深夜12時までオフィスにいても高い評価はできません。
社員ごとに最大のパフォーマンスを出せる働き方を決められるように、パーソナライズ化すればよいのです。9時6時の定時勤務も良いですし、午後勤務だけでも良いです。一切出社しなくてもよいでしょう。
リクルートホールディングスの在宅勤務は、時間、場所にとらわれずに働く方が、制約されるよりもパフォーマンスが出ると、会社も本人も同意していて、時間、場所がパーソナライズ化されている点で素晴らしいと思います。
ちなみに、当社は、就職時期を選べるのも柔軟な働き方だと考えています。新卒を4月入社で一括採用するのは日本では常識ですが、グローバルでは違います。
当社は通年の中途採用が多いですが、採用のタイミングと評価・昇給のタイミングが人によって異なるのがフェアでないと考えました。
もともと、当社は7月昇給でしたが、7月に入社した人と、3月に入社した人では、後者の方が早く昇給時期がきます。月割りで昇給幅を調整していましたが、それでも昇給タイミングの違いはフェアではありません。
そこで、当社は、各人ごとに入社から6か月タイミングで評価・昇給することとしています。全社一律同じタイミングではなく、各人ごとに昇給タイミングが異なります。
1年まとめて昇給ではなく、半年ごとの評価・昇給にしているのは、特に若かったり、キャリアチェンジだと、貢献度のスピードアップが早いので、1年ではフェアではないと考えたからです。
また、人事評価は、社員との大事なコミュニケーションツールだと考えているので、少なくとも半年に一度は実績振り返り、目標見直し・設定、その他私生活の変化などのコミュニケーションを取りたいのです。
社員毎の評価・昇給タイミングが異なるのは、マネジメント層への評価負担が、一時期に集中しないというメリットもあります。一方、ITで評価タイミングをきっちり管理する必要もあります。
働き方のパーソナライズ化の難しさは何か?
- 働き方をパーソナライズするとパラメータが増えます。働く場所、時間の組み合わせというパラメータが増え、管理が複雑になります。
- 働き方が違う社員をそれぞれ個別に適切に評価できる必要があります。社員は主に時間ではなく、成果で評価してもらう必要がありますし、その実力が求められます。
- 知的生産活動というより、時間に応じて価値を出す肉体労働を想定して作られた労働基準法との整合性を取る必要があります。
- 働く場所、時間の自由度を上げるためのITの整備が必要です。
ITは理想の経営スタイルを実現するために活用する
上述のような難しさ、制約条件があるから、一律の制度を作って、塊として管理してきたのがこれまでの人事制度です。
時代に合わせて、多様な働き方を目指しても、つい今までの制約条件を前提とした、「常識」や「制度」に当てはめることにとらわれてしまいます。
考え方を変える必要があります。
全社一律の昇給タイミングを、社員毎に変えるという発想もその一つです。
今までの常識を捨て、自社に合った理想の経営を作り、出てきた課題を解決するアプローチです。
そして、理想形のためにITを活用するとよいです。
ITは、現状の自動化のためだけに使うのはあまり面白くありません。
現状の制約条件をなくして、ゼロベースで理想の経営スタイルを実現することにITを活用できたとき、イノベーションを生み出せます。
社員毎のシフト、予定、評価のサポート、モバイルを活用してのリモート勤務、コミュニケーション、情報共有にITを活用できます。
このように、今までの常識を考え直し、社員それぞれのエンパワーを目指すのが、タレント・オリエンテッド経営におけるEAPの役割です。
ツバイソ株式会社
代表取締役 CEO 印具 毅雄(イング タケオ)
公認会計士、税理士
広島生まれ、福岡育ち。中学生の頃からパソコン、プログラミングが好きで、N88-BASICやマシン語に親しむ。大学、大学院では、AI関連技術のニューラルネットワーク、ファジィシステムとともに遺伝的アルゴリズムの改善研究をC言語で行う。
1999年、修士(芸術工学)。日本知能情報ファジィ学会論文賞受賞「単峰性関数当てはめによるGA(遺伝的アルゴリズム)収束高速化」
インターネットベンチャーを立ち上げるべく、経営の勉強のために公認会計士を取得(公認会計士二次試験2000年合格、登録番号19193)。監査法人トーマツ(Deloitte)を経て、2006年にブルドッグウォータ株式会社の創業、事業開始。
2015年、同社よりRobotERPツバイソ事業を会社分割し、ツバイソ株式会社を設立。