なぜ、あえて「オーバースペック」なERPを推奨するのか ── 「隠せる」大と「足せない」小
こんにちは、ツバイソ代表の印具です。
ERP導入のご相談を受けていると、経営者の方やプロジェクト担当者の方から、必ずと言っていいほどいただく「懸念」があります。
それは、
「ツバイソは、ウチにはオーバースペックではないか?」
「機能が多すぎて現場が使いこなせないのではないか。もっと身の丈に合ったシンプルなものが良いのではないか?」
というご相談です。
コストを抑えたい、現場の混乱を避けたいというお気持ちはよく分かります。
しかし、ERPというシステムの特性上、私は自信を持ってこうお答えしています。
「ERPの世界では、オーバースペックこそが正義です」
なぜ、一見無駄に見える「過剰な機能」や「複雑な構造」が必要なのか。今日はその理由について、少し踏み込んでお話しします。

目次
「ちょうどいい」は存在しない
まず前提として、変化するビジネス環境において、企業活動全体をカバーする統合基幹システムが「今の身の丈にちょうどいい(ジャストサイズ)」という状態は、現実にはあり得ません。
あるのは、将来を見越して「余裕がある(オーバースペック)」か、将来の変化に耐えられない「足りない(スペック不足)」か。この二択だけです。
そしてERPの世界には、明確なルールがあります。それは、
「大は小を兼ねるが、小は大を兼ねることはできない」
です。
これだけだと抽象的なので、もう少し具体的にご説明しましょう。
「隠せる」大と、「足せない」小
機能が多すぎる場合と、足りない場合。この二つには決定的な違いがあります。
1. 機能が多すぎる場合(オーバースペック)
機能が多すぎて現場が混乱するなら、設定で画面から「隠して」しまえばいいのです。
使わない機能は「未使用」にしておけば、現場にとってはシンプルなシステムに見えます。これは運用上の「選択」であり、業務に害はありません。
2. 構造が足りない場合(スペック不足)
逆に、データ構造などの基礎部分が足りない場合、これは後から「足す」ことができません。
ではどうなるか? 現場は業務を止めるわけにはいきませんから、システムに入れられない必要データを「Excel」などで管理し始めます。
これが「隠れたコスト」の始まりです。データは分断され、非効率な手作業が蔓延し、やがてExcelの継ぎ接ぎも限界に達した時、基幹システムは業務を支えきれずに「破綻」します。
つまり、「余分」は我慢(非表示)できますが、「不足」は解決できないのです。
「建て直し」という最大のリスク
ERPのマスタやデータ構造は、建物の「基礎」によく似ています。
基礎さえ頑丈なら、上の建物(画面や帳票)は後からリフォームできます。
しかし、「今は小さい家でいいから」と基礎をギリギリの強度で作ってしまい、将来、事業拡大で重さに耐えられなくなった時、どうなるでしょうか?
基礎だけを後から補強することは物理的に不可能です。
待っているのは、「建物を一度解体して、基礎から作り直す(建て直し)」という未来です。
ビジネスを継続しながら、住んでいる家を建て替える難易度は極めて高く、最初の導入時の何倍ものコストと、数年単位の時間が失われます。
「身の丈に合ったシンプルなシステム」を選んだつもりが、結果として将来、最も高いコストを支払うことになってしまうのです。
オーバースペックの正体は「安全マージン」
こう考えると、導入段階で「オーバースペック」に見えるものは、決して無駄なコストではありません。
それは、将来事業がどう変化しても「Excel地獄」や「システムの建て直し」を発生させないための「拡張性(あそび)」であり、企業が成長し続けるための「安全マージン(保険)」なのです。
これが、失敗しないERP選びの鉄則です。
ツバイソが提供する機能やデータ構造がリッチである理由は、まさにここにあります。
御社の10年後の成長を、今の「基礎」で支え続けるために。私たちはあえて、オーバースペックな提案を続けています。
まとめ
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「ERPに『ジャストサイズ』という都合の良いものはありません。『余裕』か『不足』かの二択です」
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「機能が多すぎる分には『隠せばいい』だけですが、基礎構造が足りない場合は後から『足せません』。建て直しになります」
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「建て直しは当初の数倍のコストと時間がかかります。だから、今のオーバースペックは、将来のコストを防ぐための『必要な安全マージン』なのです」
この記事について(2026年8月 追記)
この記事は2025年12月に書いたものです。「隠せる」大と「足せない」小という非対称は、いまのほうがはっきりしています。従来のERPでは、隠すこと自体にも手間がかかりました。画面や項目の出し分けは設定の作業で、部門や役割ごとに整えるには相応の工数が要ります。
Tsubaiso Intelligenceでは、画面や項目の追加と出し分け、承認ワークフローや業務のロジックの追加をAIが組み立て、組織へ反映する直前に人が承認します。つまり「隠す」側はさらに軽くなりました。一方で「足せない」側は変わっていません。マスタとデータ構造という基礎は、AIが手伝っても後から差し替えられるものではないからです。非対称が広がったぶん、余裕を持って選ぶ意味はむしろ強くなったと考えています。
あわせてご覧ください。
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- 負債化するITから資産化するITへ ── 従来型ERPとPaaS型ERPの構造的違いと解決策
ツバイソ株式会社
代表取締役 CEO 印具 毅雄(イング タケオ)
公認会計士、税理士
広島生まれ、福岡育ち。中学生の頃からパソコン、プログラミングが好きで、N88-BASICやマシン語に親しむ。大学、大学院では、AI関連技術のニューラルネットワーク、ファジィシステムとともに遺伝的アルゴリズムの改善研究をC言語で行う。
1999年、修士(芸術工学)。日本知能情報ファジィ学会論文賞受賞「単峰性関数当てはめによるGA(遺伝的アルゴリズム)収束高速化」
インターネットベンチャーを立ち上げるべく、経営の勉強のために公認会計士を取得(公認会計士二次試験2000年合格、登録番号19193)。監査法人トーマツ(Deloitte)を経て、2006年にブルドッグウォータ株式会社の創業、事業開始。
2015年、同社よりRobotERPツバイソ事業を会社分割し、ツバイソ株式会社を設立。

