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AIエージェントが部門の定型業務を無人でこなす会社では、「動かなかった日」に気づく仕組みを先に決めておく ── 請求書の作り忘れを防ぐ仕組みに学ぶ

ツバイソの印具です。

担当者が確定した請求書を月末に点検して送る仕事を、AIエージェント(以下、AI)に無人で任せた会社で、ある月だけAIが動いていなかったとします。誰も気づかないまま月が替わり、取引先から入金が無いことで初めて、請求書を送っていなかったと分かります。定型業務をAIに無人で任せる段階へ進もうとしている方なら、一度は心配する場面だと思います。

AIが処理に失敗した日は、多くの場合、失敗の通知が届き、記録も残ります。ところが、実行環境が停止していたなどの理由でAIが動かなかった日は、何も届かず、記録も生まれません。

私は、AIに無人で仕事を任せる前に、仕事ごとに「いつまでに何が終わるはずか」という予定を先に置き、予定日を過ぎても終わっていない仕事を見つける仕組みを決めておくべきだと考えています。請求書の作り忘れを防ぐために、業務を分けた基幹システムの設計で使われてきた考え方と同じです。

AIの記録の一覧には、AIが動かなかった月の行がそもそも無く、動くはずだったと知らなければ漏れに気づけない。請求の予定の一覧から確かめれば、予定日を過ぎても送付済みにならない請求が漏れとして残る
AIの記録の一覧には、AIが動かなかった月の行がそもそも無く、動くはずだったと知らなければ漏れに気づけない。請求の予定の一覧から確かめれば、予定日を過ぎても送付済みにならない請求が漏れとして残る

動くはずだったと知らなければ、動かなかった日には気づけない

AIの記録の一覧には、動いた月の行だけが並び、動かなかった月の行はそもそもありません。漏れに気づけるのは、その月にAIが動くはずだったと覚えている人だけで、休みや繁忙の時期には見落とされやすくなります。

人の担当者なら、出社しない朝に周りが気づきました。AIが動かなかった朝には、周りが気づくきっかけがありません。確かめるべきは、システムの稼働よりも、業務が予定どおり終わったかです。

漏れは、予定の側から見つける

この問題は、人の仕事にもありました。請求の時期になってから請求書を作る運用では、作ること自体を忘れたときに、そのまま漏れます。そこで、業務を分けた基幹システムには、予定日と予定金額を持つ請求の予定を、受注などの前の工程から先に作る設計があります。予定日を過ぎても終わっていない請求を見れば、漏れに気づけます。

業務 作るタイミングで作ると 予定を先に作ると
請求書の発行 取引先からの問い合わせや決算まで作り忘れに気づかない 予定日を過ぎた未請求が残る
納品書の送付 検収で売上を計上する会社では、送り漏れで売上計上が遅れる 送っていない納品が残る
仕入先の請求書の受け取り 届かない請求書に気づきにくい 発注・検収の段階で作った支払の予定から、届かない請求書に気づける

支払の予定を先に持てば、仕入先の請求書が届かなくても、金額が予定と違っても、自社だけで確かめられます。会計監査で、記録すべきものが漏れなく記録されているか(網羅性)を、前の工程で起きた事実の側から辿って確かめるのと同じ見方です。当社のRobotERPツバイソも、請求・納品・検収・支払の予定を前の工程から先に作り、漏れを予定の側から見つける設計を全体の方針にしています。

AIの仕事も、予定を先に置いて突き合わせる

AIに任せる仕事も、同じ考え方で漏れを見つけられます。AIに任せる仕事と期限を並べた「AIの仕事の予定表」を作り、基幹システムに業務の予定がある仕事は、期限にその予定を使います。

AIに任せる仕事 予定の置き場所 予定の側から見つかる漏れ
請求前の点検と送付(確定した請求の金額や取引先の取り違えを点検し、基幹システムから送る) 基幹システムの請求の予定 予定日を過ぎても送付済みにならない請求(送付済みは、基幹システムの送付の記録で付く)
毎朝の商談の点検 AIの仕事の予定表(始業までに終わるはず) 始業までに「終わった」報告が来ない日

業務の予定が基幹システムにあれば、担当者の作り忘れや送り忘れも、AIが動かなかった月の請求も、同じ一覧に漏れとして残ります。

基幹システムに予定が無い点検や集計は、予定表の期限までにAIから「終わった」報告が来たかで確かめます。受け取った人が見込みと比べて取りこぼしに気づけるよう、AIは処理した件数を報告に添えます。業務の予定を持たないシステムでも、この予定表から始められます。

予定と、漏れたときの対応は、任せた部門長が決める

AIに仕事を任せる前に、部門長が仕事ごとに次の3つを決めます。

決めること 請求前の点検と送付の例
いつまでに終わるはずか 請求の予定日を、取引先への送付期限より前に設定する。その間は、代わりに対応できる人が点検と送付を終えられる日数以上を空ける
終わっていないときに知らせる先 代わりに対応できる人が見る部門のチャンネル
知らせを受けた人がすること 状況を確かめ、その月の点検と送付を代わりに行う。行えなければ部門長へ引き継ぐ

期限と対応は、業務が漏れたときにどこまで取り返せるかで決まるため、業務を任せた部門長が決めます。予定日を過ぎても終わっていない仕事を知らせる仕組みは、DX推進や情報システム部門が全社で1つ用意します。無人の仕事をAI専用のIDで動かせば、そのIDで動く仕事の一覧を予定表と突き合わせて、予定表に載せ忘れた仕事も見つけられます。

無人の仕事が少ないうちは、部門でAIの仕事の予定表を作り、「終わった」報告を部門のチャンネルに集めて、正と副の担当者が期限に予定表と突き合わせる運用から始められます。仕事の数が増えたときや、取り返しにくい仕事を任せるときに、全社の仕組みへ移します。

予定があるから、無人に任せる範囲を広げられる

動かなかった日を取り返せる時刻までに知れれば、無人に任せる仕事を増やせます。統制は、任せる範囲を広げるための設計です。AIに無人で仕事を任せるなら、仕事ごとの予定を先に置き、予定の側から漏れを見つける仕組みまで、任せる側が決めておくべきだと考えています。

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代表取締役 CEO 印具 毅雄(イング タケオ)

ツバイソ株式会社

公認会計士、税理士

広島生まれ、福岡育ち。中学生の頃からパソコン、プログラミングが好きで、N88-BASICやマシン語に親しむ。大学、大学院では、AI関連技術のニューラルネットワーク、ファジィシステムとともに遺伝的アルゴリズムの改善研究をC言語で行う。 1999年、修士(芸術工学)。日本知能情報ファジィ学会論文賞受賞「単峰性関数当てはめによるGA(遺伝的アルゴリズム)収束高速化」
インターネットベンチャーを立ち上げるべく、経営の勉強のために公認会計士を取得(公認会計士二次試験2000年合格、登録番号19193)。監査法人トーマツ(Deloitte)を経て、2006年にブルドッグウォータ株式会社の創業、事業開始。 2015年、同社よりRobotERPツバイソ事業を会社分割し、ツバイソ株式会社を設立。

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